第8号 : 「瀬戸内の町はいま」岡山県玉野市(中)

鳥取環境大学3年尾上功哲(おのうえ・こうてつ)

前回は、私のふるさと玉野市の概要、これまでの歴史や、私自身が率直に感じた現在とこれからについてふれた。しかし、書いていくなかで、私にいくつかの疑問や気になる点が浮かんだ。
1.玉野市がかかえるいまの課題、2.地域再生事業の取り組み内容、3.市と住民との距離。
そこで私は、以上の疑問点を解決すべく、9月中旬、地域再生に取り組んでいる市職員の方と、商店街に住んでいる方に、インタビューをおこなった。商店街の方々には、住んでいる方にしかわからない、これまでの実態、そして市の取り組みに対する率直な思いを聞いた。
まず、私は市役所を訪れ、地域再生に取り組む総合政策課の職員の方に話をうかがった。お話は、以下のようなものであった。
いま玉野市がかかえる最大の問題は、まちなかのにぎわい喪失である。その背景として、瀬戸大橋開通にともなう宇高連絡線の廃止による交通体系の劇的な変化や、第2次産業から第3次産業への産業構造の転換による造船業の海外への事業流失などがある。さらに、JR宇野駅付近にある広大な敷地を使ったスペイン村構想の頓挫という決定的な打撃があった。構想は、着工直前になって、利益の増加が見込めず、白紙となってしまったのだ。直島への観光客が増加したにもかかわらず、中心市街地へ観光客の通行人は減少し、衰退していった。そこで、市では中心市街地活性化基本計画を策定し、地域再生に乗り出している。
市の人口は、昭和51年の8万人をピークに年々減少している。8月末現在63,031人、うち高齢者の割合は約3割である。近年、若者の地元離れにより、人口減少と高齢者割合増加のスピードが著しく、介護などが大きな問題として浮かび上がっている。そんな中で、玉野市の中心市街地に住んでいる地域住民にとって暮らしやすい街づくりが求められている。
つづいて、市役所近くにある「シャッター商店街」を訪れた。商店街は、アーケードが撤去されていて、以前にくらべて太陽の光が注がれていることで、暗いイメージは消え、明るい商店街になったと感じた。それでも、平日の昼時にもかかわらず、誰も歩いておらず、閑散としていた。
私は、商店街の入口付近で店をされている方に話をうかがった。その方は「いまやほとんどが、商店街内か周辺にお住まいの方々しか、ふだん見かけることがない。ましてや、その人たちでさえも利用することは少ない。にぎわいを取り戻すためには、やはり市と(私たち)住民との一致団結は必要不可欠である。しかし、まだどことなく市と住民たちとの距離は遠く感じる」と話された。
さらに別の方に、「なぜ、いまここに住んでいらっしゃるのですか?」という質問をした。その人は「玉野市がこれからかつてのようなにぎわいを取り戻すのは、現実的に厳しいと感じる。でも、いまでもここに住んでいるのは、玉野市が大好きであり、私にとって住みやすい街だからだ」と答えられ、玉野市をこよなく愛する気持ちがひしひしと伝わってきた。
お二人の話から、市が地域再生事業をおこなうには、それなりの費用と時間が必要であること、住民が求める事業に取り組むことが必須条件であることを感じた。
いまの玉野市は、高齢者の増加が著しく、それに対応する高齢者の住みやすい街への転換が求められている。そこで、私は地域再生事業を、医療を主軸として取り組んでいくべきと考えるのだ。
たとえば、市役所付近には、赤十字病院と市民病院の二つの大病院がある。しかし、玉野市全体として高齢者のための施設や大きな総合病院は充実していない。そのため、今後ますます高齢者施設のニーズは高まると同時に、これから就職をしていく若者にとっても介護などの需要が高くなることはまちがいない。
そこで、若者離れの進む玉野市が、高齢者医療や介護を軸とした地域再生事業をおこなえば、それが若者の地元での就職先を生みだすことになる。地域の住民が住みやすい街づくりは、若者たちの地元離れを止める街づくりにもなるわけだ。それを実現することでようやく、地域再生事業のスタートラインに立つことができ、それから先に観光客の増加や他地域からの移住につながっていくのではないだろうか。
今回は、実際に地元で取り組みをおこなっている市役所の方や商店街に住む方にお話を聞き、いまの玉野市がかかえている課題やこれからの方向性、そして市民が感じる市の取り組みへの思いなど、貴重な声をじかに聞くことができた。
玉野市は、人口減少にともない、高齢者の割合が高まり、ますます地域の人に愛され、住みやすい街への改変が要求されている。それに対して、つぎを担う私たち若い世代も、これからの玉野市についての考えを発言していかなくてはならないだろう。次号では、地元出身の若者が率直に感じる問題点や取り組みのあり方について、医療の視点から提案したい。

鞆まちづくり工房ニューズレター28号(2014.11.15)より転載

学生座談会