第4号:大学の国際交流プログラム―韓国・清州大学との相互学生交流プログラムに参画して―(新井)

大学の国際交流プログラム―韓国・清州大学との相互学生交流プログラムに参画して―(新井)

夏休み中の日韓相互学生交流プログラム

前期試験が終わると、大学は2カ月ほどの夏休みとなります。夏休み期間中、基本的には学生の皆さんは、何をするのも自由なのですが、この夏(2013年)、私は学生たちと一緒に、本学と相互交流協定を結ぶ、韓国の清州大学との交流プログラムに参画しましたので、その様子と大学の国際交流プログラムの意義について述べたいと思います。
相互交流とは、文字通り、本学と清州大学、日韓両国の学生たちが、お互いの大学を訪問し合い、講義や文化体験などを通じて、国際的な学生同士の交流を深めるものです。

鳥取での交流プログラム

まず、8月6日~9日に清州大学の8名の学生たちが鳥取に来訪し、本学の学生たちと交流しました。この間、プログラムに参加した本学の学生10人がホスト役を含め、日韓の若者たちが、茶道、浴衣着衣などの文化体験や鳥取砂丘の散策のみならず、寝食、行動を共にして大いに交流を楽しんだ様子でした。
大学間の国際交流においては、文化体験や観光と言った、言わば、遊びの部分もありますが、両国の学生が真剣に学び合うことも重要です。そう思って、私は「日韓交流の課題と展望」と題した、やや硬めの内容の特別講義を、プログラムに参加した日韓の学生たちを前に行いました。

特別講義「日韓交流の課題と展望」

特別講義「日韓交流の課題と展望」

近年の日韓交流は、両国の大学生など若い世代を中心に、日本での「韓流」と同様に、韓国でも「日流」(イルリュウ)と呼ばれる日本文化、ポップカルチャー等のブームが起こるなど、双方向で文化や観光の交流が活発化し、拡大傾向にあります。しかし、昨年の竹島問題とその影響に代表される様に、時として両国の間に深刻な問題や摩擦が生じることも事実です。
「こうした現状についていかに考えるか?」、私はプログラムに参加した両国の学生たちに問いかけ、質疑や意見交換を交えながら、講義を進めました。
例えば、「お互いの国の人と言うと、まず誰を思い浮かべますか?」と言う質問に対して、本学の学生からは、韓流スターやK-POPの芸能人の名前ばかりが挙がったのに対して、韓国の学生からは伊藤博文の名前が挙がりました。
本学の学生たちの多くは、「なぜ、伊藤博文が・・・?」と思った様でしたが、その理由について学生に問い直すと、ある本学の学生から「昔、日本が韓国を植民地にした時の責任者だから」という回答がありました。
伊藤博文は、日本では初代の首相として有名ですが、韓国では日本が韓国を植民地にした、いわゆる「韓国併合」(1910年)の時の初代の韓国統監として悪名高いのも事実です。
そして、韓国で行われた「日本人と言うと、まず誰を思い浮かべますか?」についての世論調査では、ダントツで一番目に挙がる人物が、伊藤博文なのが日韓関係の背景にある悲しい現実でもあります。
この様に、表面的には交流が拡大する両国の間には、領土としての竹島問題を含めた歴史に対する認識について、大きな違いがあり、それが原因となって、時として大きな問題や摩擦を生んでいます。
講義では、こうした事例をふまえながら、日韓両国の間にある歴史認識の違いについて、その存在や意味を、まず、認め合うのと同時に、日本の学生たちには日韓関係の近代史を、韓国の学生たちには、第2次世界大戦後、平和主義を一貫する現在の日本、日本人の姿を、お互いに、知ること、そして、共に学び合い、交流する事の意義や重要性について指摘しました。

韓国・清州での交流プログラム

日本での交流プログラム終了後、8月20日~23日には、本学の学生10人が、韓国の首都、ソウルから東南に120kmほどの位置にある清州市の清州大学を訪れ、私も同行しました。今度は、逆に、本学に来訪した韓国の学生8人が、ホスト役になって、清州市内の観光や韓国の伝統音楽などの文化体験、韓国の文化についての講義などのプログラムに共に参加して、交流を深めました。2週間前に、鳥取に来たばかりの時は、お互いにぎこちなかった両校の学生たちでしたが、鳥取、清州での交流プログラムを通じて、すっかり仲良く、打ち解け、話し合う様子を見て、両国の学生、若い世代が、こうした交流プログラムや実際の体験を通じ、歴史認識の問題を乗り越えて、今後の交流を深化させて行って欲しいと切に思いました。
また、清州大学では、日本のみならず多くの留学生が滞在するInternational Villageに宿泊しましたが、短期留学や国際交流プログラムのみならず、外国語として英語と中国語が必修な上に、日本語も勉強する、参加した韓国の学生たちの語学能力や学習意欲の高さや、国際化が進む、韓国の大学の様子に、学生たちも驚き、大いに刺激を受けていた様でした。

韓国・清州市役所、韓市長への表敬訪問

韓国・清州市役所、韓市長への表敬訪問

大学の国際交流プログラムの意義

鳥取環境大学では、前期試験を終えた夏休み中には、韓国・清州大学との交流プログラム、後期試験を終えた春休み中には、ニュージーランド・ユニテック工科大学に短期留学を行う交流プログラムが行われています。また、清州大学には半年間の語学留学をすることも可能です。
グローバル化が著しく進展する世界、現代社会において、私たち自身が、直接、外国を訪れ、直に異文化を体験、理解し、違いを認め合い、交流を深めるのと同時に、客観的に自国の長所や短所を見つめ直す経験を持つことは、教育のみならず、経営、ビジネスや政治、経済、文化など、あらゆる分野において重要な要素になっています。
韓国のみならず、周辺のアジア諸国と比べても、留学や海外旅行の経験や希望者が少ない内向きな日本の大学生の様子が指摘されていますが、言葉や習慣、文化の違いのみならず、海外生活の不自由さと比べた国内の生活の便利、快適さや、インターネットを通じた海外情報の入手のみで足りるとして、海外に出て行かない「パラダイス鎖国」と言った考えや行動は、これからの時代、日本の地方においても通用しなくなると思います。
私の専門の観光や地域政策、地域振興の分野でも、地方のインバウンド振興策や中小企業の海外事業展開等が重要な成長分野、戦略となっており、地域や国内のみならず、アジアや世界に視野を広げ、重層的に物事や戦略を考えていくことが重要になっています。そうした考えのベースとなるのが、自らの海外生活や国際交流で得られた知識や経験です。そして、それは、インターネットが発達した時代だからこそ、直接、現地に赴いて、直に経験、交流しないと得難いもの多い様に思います。自分の身の回りの地域や、国内だけの視点や範囲だけで物事を考えることは、国際感覚の欠如、場合によっては無知につながってしまいます。
私の経験からも、大学時代の海外経験や、大学の国際交流プログラムや国際交流サークルに参画したことが、その後の自分の考えや生き方に、非常に大きな影響を与えていると実感しています。本学の学生のみならず、進学を考える高校生の皆さんも、休み中のアルバイトも大事でしょうが、大学の長期休暇を利用して、ぜひ、積極的に大学の国際交流プログラムや事業に参画して欲しいと思います。きっと、日本にいるだけでは得難い知識、経験が得られたり、海外の友人も出来ると思います。
そして、最後に一言、今回の清州大学交流プログラムへの本学、学生の参加者は、写真の通り、何と10名中、9名が女子学生と女子ばかり・・・。事前審査に申し込んだ参加希望者も圧倒的に女子学生が多い状況でした。来年は、是非、男子学生の奮起、積極的な参画を期待します!

(2013年9月 新井記)

学生座談会